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2017-06-25

しあわせの牛

私は毎朝、外に出るたびに驚くのです。あまりにも空気が澄んでいることに。透き通った空気が、遮るものなくまっすぐ私を射します。毎朝、毎朝。北軽井沢という豊かな地で暮らせることを幸せに思うのです。そして、それは北軽井沢でよく目にする牛たちも同じ。彼らも、毎日幸せを感じているのでした。10ルオムの森のカフェでお出ししているチーズケーキにそのまま入っているカマンベールチーズ。このカマンベールチーズはバイオトラスト軽井沢牧場の牛乳で作られています。そこの眞下さんにお話を伺ってきました。

 

拓き、築き、貫く4約60年前。眞下さんの牧場は、お父様が開拓するところから始まりました。木を伐り出し笹を焼き払い畑にして、お金に換えられる作物を育て、家族が食べていくためになんでもしたそう。今、黒い畑があるのもそのお陰と深い思いを滲ませて眞下さんはおっしゃいます。最初は牛が6頭。それだけでなく馬、鶏、羊、ヤギなど家畜が色々いて、小学生だった眞下さんはご両親を支えるために、家の仕事を手伝い牛の世話をしていました。そこで転機が訪れます。眞下さんは奨学金を勝ち取り、17歳から約2年アメリカの牧場経営を学びに留学出来ることになったのです。そこで大きな経験と知識と自信を得て日本に帰り、実家の牧場を更に大きく強くしていきます。5そして息子さんが大きくなり共に牧場経営を出来るようになると牧場を法人化します。人を雇い、給料を払い、休みが取れるように、働く環境を整えました。そして今では牛の数は約300頭。ただ牛が増えて大きくなっただけではありません。そこには変わらぬ信念があります。2

 

好きなだけじゃダメ。だけど

冷涼な気候の北軽井沢では酪農業の最適地。しかしかつて120件あった酪農家は、今では30件程度に減っているそうです。なぜ辞めていくのか?酪農を取り巻く厳しい状況はニュースで耳にします。ところが、眞下さんは動物に対する考え方にもよるのではないかと言います。7確かに牛は家畜です。人間にメリットをもたらすためにコントロールされて飼育されています。動物が好きなだけではダメ、利益を生み出さないと続けられない。しかし、根底には動物への愛情が欠かせません。牛がのびのびできる環境で、栄養バランスが良くおいしい飼料で、病気することなく衛生的であること。牛にとって気持ちよく暮らせることが、ひいては品質の良い乳につながるのです。その信念があったからこそ、眞下さんの飼う牛が認められ、牛乳が認められ、ここまで牧場を大きくすることが出来ました。それでも眞下さんは言います。「まだスタート地点。まだまだこれから・・・」1

 

きたかるブランドへ

品質の高い眞下さんの牛乳は、産地指定の「北軽井沢牛乳」として販売され始めています。これは縮小・統廃合が進む酪農業の中では異例のこと。眞下さんの牛乳が他に負けないブランドとして認められていると言う事です。

標高1,000m浅間高原の澄んだ空気。山から吹く爽やかな風。豊かな森が育む水。毎日幸せを感じる牛。衰えぬ情熱を燃やす人。これらが力となって良い牛乳となり、そして眞下さんの作る牛乳がこの地の力になるように。厳しい酪農業を悠々と生き抜いていく眞下さんの背中が見えました。11